EP.27 ページ28
『うわぁ…！』
「好きだったろ、水炊き」
『何年も前のことなのによく覚えてたね』
「帰るたびにいっつも同じ自販機で水炊きの缶買ってたろ」
『すごい、そんなことまで覚えたんだ』
「なんとなくな」
『…豆腐もお肉も美味しい…！…でもどうして急に誘ってくれたの？』
「…ん？いや、何かまた久し振りにメシとか行きたいなーって思っただけ」
『翔ちゃんから誘ってもらうなんて初めてに近かったからびっくりした』
「何回か誘ったことあったろ」
『そう？』
「いや、わかんね」
『ダメじゃん』
「いや、でもマジ2人でとか久し振りだわ」
『ね』
「俺らも歳食ったよな」
『それ、あと30年くらいしてから言う台詞じゃん』
「何気に出会ってから10年以上経ってんだわ」
『長いね』
「だな」
『また、こうやってご飯食べたりしたいな』
「気が向いたらな」
『誘われなくても私が誘うよ』
「予定が合えばな」
『まぁ、そうね…お互い忙しくさせて頂いているし、今は目の前にあるお仕事を一生懸命やらないと』
「そ」
『…そろそろいい時間だね、先に出るね』
「もう支払い終わってるから」
『え⁉︎それはごめん！おいくらだった？』
「いいって、今日は俺が誘ったから素直に奢られてろ」
『……それじゃあ、このお礼はまた今度…！』
「まぁ、それならそれで」
『本当に今日はありがとう、久し振りに翔ちゃんとこうしてご飯食べながらお話できて楽しかった』
「…俺も、楽しかった」
『じゃあ』
「気をつけて」
あぁ、こんな時間がずっと続けばいいのに
ご飯中、頭の片隅でどこか思ってた自分がいて…
でも、
ずっとなんて無い
絶対なんて無い
この業界では当たり前が当たり前じゃない
普通に好きな人とご飯を食べてお出掛けして
友達とおしゃれなカフェでお茶したり旅行したり
私もできないわけじゃ無い
けど
“女優の紅乃A”
この肩書きがある限りできないことが多い
同じ女優をしている友達と出掛ければ、その事がネットで広まり
相手が男性であればすぐさま事務所に問い合わせがくる
だから油断せず今まで過ごしてきたはずなのに
なのに…
〔作者より〕
お久し振りです。作者のkikoです。
更新期間が1ヶ月以上開いてしまいました。
その間にこの小説が友人にバレてしまい大変なことに、、
ゆっくりですが更新再開します！
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作者名：kiko | 作成日時：2023年12月11日 19時
