EP.30 ページ31
気持ちを入れ替えようにも、どこか心の端っこに何か引っ掛かるものがあって
「…さ…？」
「…さん？」
「紅乃さん！」
『あ、はい！すみません』
「どうかされましたか？」
『いえ、すみません。大丈夫です』
「そろそろ、よろしいですか？」
『はい、よろしくお願いします』
「お疲れ様でしたー！」
『お疲れ様でした！』
「最近暑くなってきたねー体調には気をつけてよ？」
『はい』
次の現場までの時間が結構あるので車の中でマネージャーと早めのお昼ご飯を食べる
今日の雑誌撮影、ちゃんと笑えてたかな
固い表情じゃなかったかな
そんなことを考えていたら、お箸が止まっていて
同じお昼を食べていたマネージャーが口を開いた
「そう言えばさ、同じシーズンで2本のドラマにメインキャストとして、出演して…移動車の中でも酔わないように工夫しつつ台本読んだり、撮影しているドラマのSNSをチェックしたり、疲れも溜まってるだろう車内でも寝なかったAを私や、他のスタッフさんや共演者さんはよーく知ってる」
『…』
「あなたを1番近くで見守っている私からすれば本当に凄いって思うし、尊敬してる」
『……』
「こんな事、言って良いのか分からないけど…私は、Aの好きにしたら良いと思う。…こんなに頑張ってるんだもん、プライベートにまで踏み入るようなことは極力したくない」
『…』
「社長もこの前のことがあったから、改めて他のマネージャーも交えてプライベートのこととか週刊誌への対応について、考え直そうとしているみたい」
『…そうなんですね』
「結構話しちゃった…これ以上は言えないけど、もうAは気にしなくて良いように会社も動いてるから、いつも通りに、いつも通りに！これからの仕事に戻していこう」
『…ありがとうございます』
「本当によく頑張ってるよ、本当に」
『それは、支えてくださってる皆さんのお陰です』
「嬉しいなぁ」
『……あの、明日のスケジュールってどんな感じでしたっけ』
「明日？何かあるの？」
『車、買おうと思って』
「車！？持ってなかったの？」
『持ってはいる、と言うか実家で使ってた車を今は使っていて』
「全然知らなかった」
『見に行って、気に入ったものがあったら買おうかと思って』
「14時には終わるだろうから、その後なら大丈夫じゃない？」
『ありがとうございます』
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作者名：kiko | 作成日時：2023年12月11日 19時
